マルチ・エフェクター。数々のエフェクトを内蔵し、「これ1つ」で何でも出来てしまうというギタリストにとってとても都合の良い存在
それはさながら、かわいい八重歯と飲み会のボディタッチで童貞新入生を骨抜きにしてしまう大学軽音部のクソビッチ先輩のような、手を伸ばせそうだけど伸ばしたら伸ばしたで色々とややこしいことになりそうな、そんな存在。
皆さんの中にもマルチエフェクターに手を出して、結果「やっぱこだわりのペダルの方が」みたいな事言って結局メルカリに流れる…っていうパターンを味わった方もいらっしゃるはず。少なくとも僕はそうだった。
でも、それは無理からぬ話で、一つ一つのエフェクトの音質とかを見ていけばそりゃ一芸に特化した物の方が評価されちゃいます。
しかし、多芸なのに一つ一つのエフェクトも結構使えるじゃん!っていうのがマルチの強みだと思うので、マルチエフェクターとの良い付き合い方について話したいと思います。
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パーフェクトを求めてはいけない
先ず、マルチを使う上で避けて通れない話題が「ペダルに勝てない」問題じゃないかな?と思います。
確かにペダル単体で数万行くような、Bondi EffectsのSick As OverdriveとかOvaltoneのペダルと比べてしまうと当然ながらマルチの歪みは音質では負けてしまうかもしれません。
もうそれはみんな分かっている事じゃないかと思います。
なのでそこはしっかりと受け入れつつ、75点くらいの質を求めるとマルチ使いは幸せになれます。
マルチは、メーカーが厳選した「そこそこ使える」ペダルばかりが膨大に内蔵されているので、どんな局面でも絶望的に困ることはほぼ無いと言えるし、その観点で単一のペダルがマルチに肉薄する事は不可能でしょう。
例えて言うなら、「ギタリストだけ超絶美味いバンド」と「個々人の能力はそれほどでもないがメンバー全員で魅せるバンド」みたいな感じかなと思います。
クラプトンとビートルズは張り合ってないし、一長一短あっていいじゃない。
制約にこそ自由がある
最近は個人や新興のメーカーがどんどん出てきて、エフェクターの量が増えているしSNSで色んなものを目にする事が多いですよね。
マルチの場合、リリースして数年はファームウェアアップデートがされたりします。
しかし、同じメーカーの新製品が出たり開発したりしていると基本それ以上抜本的なアップデートはあまり見込めません。
「もっとこういう機能があれば…!」みたいな思いはどうしたって出てくると思います。しかし、逆に制約があるからこそクリエイティブになれるという事もあるのでは?と思ったりします。
例えば、HIPHOP界の「名器」のサンプラー「SP-1200」は音源をサンプリングする時間は最大10秒しかなかったらしいです。
逆に「10秒」という絶対的な制約があったからこそ、その10秒でいかにクリエイティブな音楽を作るか、というマインドが形成されたらしいですよ。
限られたエフェクト数や機能だからこそ、厳選した音作りを可能にすることもあるかも…??
演奏に集中しやすくなる
大事。これすごい大事。
特にライブの時は慌ただしくバンドの転換があって、ギターやらシールドやらエフェクターやら設置して音出して音量とか調整してチューニングとかとかもううわあああああああああああああああ
とにかくテンパりやすい環境なんです…
その時にエフェクター沢山繋いだはいいけどノイズが乗ったり、歪みペダル踏もうとしたら隣のボリュームペダルに干渉して音小さくなったり・・・そもそもアンプから音出なかったりなどなど様々なトラブルの可能性に溢れています。
その点、マルチの導入だけでかなりストレスを低減することが出来ますね♪例えば以下のように。
パッチケーブルなど無い: チューナーも内蔵してるし、マルチとケーブル2本だけ用意すればいいのでノイズや音痩せが発生しにくい
アンプが酷いならPAから出せばいいじゃない: XLRケーブル対応のマルチなら、PAに直でしかもステレオで出力できちゃいます。自分の音は自分のモニターに返せばいいし、不安なら+1本シールド繋いでアンプもモニターにしてしまえばいいです。
ペダルの踏み間違え予防になる:マルチでは「パッチ」という、複数のエフェクトを一度に起動させる事が出来る機能があります。
パッチ機能については、以下に補足します。
- パッチA: 1曲目のバッキング用に歪みAとショートディレイとリバーブ
- パッチB: 1曲目のソロ用に歪みBと深めのディレイとコーラス
- パッチC:1曲目のアウトロ用にコンプレッサーとワウペダル
上記のように、ペダルを1つ踏むだけで複数のエフェクトを呼べるので、踏み間違いは予防できます。
スイッチャーなしの直列ボードで同じ事をやろうとするとほぼタップダンスレベルの難易度になるので演奏どころじゃなくなっちゃうことも…
これらのありがちなトラブル点をマルチなら未然に防ぎやすいので、純粋に演奏とパフォーマンスだけに注力出来ます!結果、良い演奏に繋がりやすくなりますね。
音も大事だけど、それ以上に演奏の質はもっと大事!マルチなら演奏の邪魔をされないで済む?
ここは注意しておいたほうがいい
さてさて、ここまでマルチの良い所についてあげつらって来ましたが、注意点も当然ながらあります。
デジタル製品なので、壊れたらその場での現状復帰は絶望的
落として壊してしまったりすると、歪からディレイから何から何まで完全に終了してしまうので、扱いには注意が必要です。ただ、正直余程手荒に扱わない限りは壊れるというのはあまり聞きませんが…
パッチを間違えることもある(経験済)
こればっかりは慣れるしかないですね。。スイッチャーでもたまにやらかす事案かもしれませんが、多機能で一括で制御できるだけに操作を間違うと思ってたのと全然違う音が出てきたりします。バラードで急にファズとか出るともう緊張も度を越して笑っちゃったりしますw
パッチチェンジする時の音量の増減
ハイゲインアンプのシミュレーションからクリーンアンプのパッチに変えたりすると、劇的にボリュームが落ちたりするので、リハで音量を調整しておかないといけないので注意です
音作りまでに時間が掛かる
自由度が高い分、1からアンプを選んだりエフェクターを選んだり、各パラメーターをいじったりしてるとびっくりする位時間が溶けます。一旦落とし所さえ決まれば、あとは使い回しでなんとかなります。個人的には、この時間が一番楽しかったりします♪
内蔵チューナーはパッとしない事が多い
マルチなので一応付いてますが、なんとなく精度が不安なので僕はクリップ型のPolytuneを念の為付けてます
勿論デメリットもあるので、そこも加味して判断したほうがいいかも
おすすめの今買いやすい型落ちマルチ
マルチは刻一刻と進化し続けています。
最近だとMooerのGE-300やLine6 Helix, BOSS GT-1000等、驚愕のクオリテティのマルチが増えています。そういうのを見たり弾いたりすると「うわ、最強かよ」って思ったりしますが…悲しいですがデジタルものは進化し続けているので3,4年するともう化石扱いされたりしています。
ただ、現時点で型落ちのマルチでも正直全然使えるし、古いからという理由で選択肢から外してしまうのもちょっと気が早い気がしませんか?
現に、日本に冠たるリアルガチスタジオミュージシャン、小倉博和さんもPOD XTを2台使ってライブしてたりしますし僕の知り合いのプロギタリストの方の中には2000年代中盤位に製造されたBOSSのGT-8を現役で使っている方もいらっしゃいました。
なので、すごい乱暴にまとめると「要は使いよう」のようです。
あのめっちゃ古いpod xtであの音出されると流石にビビりますね…
という事で、型落ちだけど今でも全然使えて、かつお財布に優しいマルチを紹介していきます。
Zoom G3X
一時期めちゃめちゃ人気ありましたよね。
アンプシミュレーター完備、ステレオアウト/XLRケーブルにも対応しています。
EXPペダルでディレイのmixや歪みのgainをコントロールする事も出来る優れものです!リズムマシンやチューナーも付いていてて、練習のお供にもgood!
今メルカリだとだいたい1万円しない位で買えます。価格で選ぶならこれ以上ない良品かも?
G3についてはこちらで詳しく書きましたのでぜひみてみてください♪
BOSS ME-80
ディスプレイ見ながらゴニョゴニョするのが面倒な方!そんな方におすすめのマルチです。
見ての通り、「個別のエフェクターを合体させました」みたいなマルチです。
エフェクトループ?XLR?うるせぇそんなもん必要ねぇんだよ!
と言わんばかりの男気溢れるマルチ。
アンプも歪みも空間系も、全部ノブでいじってあとは設定をセーブするだけ。
ディスプレイ内のデータに埋もれているパラメーターを触らなくらいいい分セッティングが直ぐに決まっていつでも使えるというのは安心!さすがBOSS!
メルカリだと2万円位だった気がします。
BOSS GT-100
続けてBOSSです。今度は打って変わってthe マルチみたいなビジュアルのやつが来ましたね。
ME-80とはほぼ正反対で、エフェクトループもXLR端子も入っています。
BOSSがGTシリーズで醸成し続けてきたCOSMエフェクトの集大成、みたいなマルチです。
EZ-TONEという機能で好きなジャンルや、すーごいざっくりした音の方向性だけ適当に設定してもそれだけでかなり仕上がった音を出せてしまいます。
そこから音作りを追い込むこともできるし、ペダルを踏むだけで複数のエフェクトを同時にONにする事が出来たりと、現場での使いやすさに配慮された製品みたいです。
この手のマルチは、好みの音を出せるまでに時間掛かるイメージですが・・・前述のとおりEZ-TONEでおおまかな音を作れてしまうので仕上げるまでの時間も短縮できそう!
当時のフラッグシップモデルだけあって未だに少しお高いです。
POD HD-500X
HELIXの1世代前(だと思う)のマルチです。GT-100同様、出来る事がとても多いのが特徴です。
1パッチに最大で8個エフェクトを設定できたり、XLR端子完備でPA直でライブも出来たり、アンプの設定ではBIASやSAG等よくわかんないけど音がちょっと変わる設定があったりとかとかとか…
個人的にびっくりしたのが、アンプシミュレーターを1パッチに2個設定出来るっていう点ですね。
ステレオでLからクリーン流してRからクランチ流すのも良いし、2台のアンプの音を混ぜてモノラルで出力することでさらに音作りの幅を広げる事が出来ます。
POD系は歪みに強いけどクリーンだいぶしょぼい、みたいな話をたまに耳にします。僕は以前HD-400を使ってほぼクリーンでライブしてましたが、クリーン音で困ることは正直あまり無かったです。エフェクトループもあるので、クリーン対策としてEP-Boosterをかまして太い音にする事も容易でした♪
最後に
だいぶ長くなってしまったので短くまとめますね。
マルチの是非論はここ10年近くでいつも話題になりますが、個人的には用途と使い方次第でステージでの演奏を円滑に回すことが出来る良い機材じゃないかなと思っています。
勿論パッチ作りやそもそもの音質で苦労する事もあるかもしれませんが、真面目に向き合えば相応の音を出してくれたりします!75点位の音でも、スムーズなライブセッティングから操作をサポートしてくれる事を考えると、煩雑とした直列エフェクターボードよりはるかに高いパフォーマンスを叩き出せるんじゃないかな?と僕は思います。
是非ライブ用機材としてご一考してみてください~!
マイナス面は、皆さん愛で補ってらっしゃいます。愛は大事。
ライブ演奏と音質の折り合いを付けられるツールとして、マルチも選択肢に入れてみてはいかがでしょう?
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